衛星を“使い捨て”にしない軌道上サービスの時代へ:Katalyst Spaceへの新たな投資
Written byRayfe Gaspar-Asaoka & Tom Gillespie
もし衛星を宇宙空間でアップグレードできるとしたらどうでしょうか。何十年ものあいだ、衛星は、打ち上げ後に仕様を変えにくいものとして扱われてきました。設計は打ち上げの何年も前に固められ、燃料が尽きるか軌道を外れるまで運用され、その後は新しい宇宙機に置き換えられてきました。しかし、宇宙空間がますます過密化し、競争が激しくなり、戦略的重要性も高まるなかで、これまでの衛星運用のあり方は次第に行き詰まりつつあります。アップグレードも、再配置も、防護もできない衛星は、いまや負債になりつつあります。
Katalyst Spaceは、衛星を使い捨ての存在ではなく、状況に応じて柔軟に機能を拡張しながら運用できる動的な資産として活用する未来に向けた技術開発を進めています。同社は、軌道上の衛星に接近・ドッキングし、各種サービスを提供する自律型ロボット宇宙機群の開発を進めています。中核プラットフォームである「NEXUS」は、衛星の運用寿命を延ばすとともに、宇宙状況把握を可能にするモジュール型の機能拡張を展開します。また「SIGHT」ペイロードは、いわば宇宙における防犯カメラのような役割を果たし、「SHIELD」は展開型の偵察装置を備えています。 さらに「ARC」と「ICON」という独自のソフトウェアとあわせて、Katalystは形成されつつある軌道上サービス経済圏を支える統合的なインフラ層を構築しています。
私たちが強く印象づけられたのは、このチームが技術的に難しい構想を、驚くべき速さで実運用レベルへと具体化してきたことです。
Katalystはすでに飛行実績を有しており、さらにNASAから、5億ドル規模の Neil Gehrels Swift Observatory1を救出するミッションに選定されています。これは、整備やドッキングを前提に設計されていない宇宙機に接近・合流し、対象機を確保して軌道上で機動させることが求められる、前例のないミッションです。このミッションが成功すれば、Katalystは、この水準のロボットによる宇宙機アップグレード運用(機能の追加搭載、点検、補助など)を実行できる、世界でも数少ない企業の一つとして位置づけられることになります。しかも、それを契約締結から打ち上げまで、わずか9か月という驚くほどの短期間で成し遂げることになります。
Katalystには、まさにこのミッションのために結成されたチーム、人材が揃っています。CEOのGhonhee Leeは、Raytheonで誘導・ナビゲーション・制御(GNC)に携わった経験を有しています。CTOのGavin Petitは、Atomos Spaceの買収を通じてKatalystに加わるまで、10年以上にわたりSpaceXでFalcon 9やStarshipのシステム開発に従事してきました。さらに、チーム全体としても、宇宙機システムとロボティクスにまたがる高い専門性を備えています。
GeodesicのAlliance Fundでは、ディープテックと国家安全保障の分野におけるアーリーステージ企業に投資しています。機動的な宇宙運用は、米国とその同盟国がこれからの宇宙領域でどのように競争していくかを左右する中核的な能力の一つであり、Katalystはこの分野の最前線で事業を展開しています。私たちは、KatalystのSeed-2ラウンドを主導できることを誇りに思うとともに、このミッションの一員として関わる機会を与えてくれたチームに感謝しています。
KatalystのSeed-2に関する発表はこちらをご覧ください。
Katalyst、衛星サービスのため宇宙ロボットを静止軌道へ送り込むべく1,200万ドルを調達
1 ガンマ線バーストなどの突発的な宇宙現象を観測するNASAの宇宙望遠鏡