2026年のDeepTechを左右する、国家安全保障の5つの潮流
Written byRayfe Gaspar-Asaoka
東京で開催されたGeodesicの年次イベントと、その後の1週間にわたる東京滞在を終えて、あらためて強く感じたことがあります。政府関係者、企業、創業者との会話のなかで、繰り返し浮かび上がったのは、ディープテック企業を育てるうえで、アライアンスがいかに重要であるかということでした。
いま、ベンチャー支援を受けた企業と実際に機能する連携の道筋をつくろうとする動きや関心が、確かに広がっています。防衛予算もまた、半導体、コンピュート、宇宙、AIといった分野で、商用領域に近いスピード感で本番レベルの成果を出せるチームへと、着実に流れ始めています。
Geodesic Alliance Fundは、ディープテックと国家安全保障の交差点に投資をしています。なかでも米国と日本を中心とする同盟国のネットワークは、私たちの市場の見方そのものを形づくっています。
ここでは、私たちが2026年に注目している5つのテーマと、それが次の時代をつくる創業者や防衛分野の意思決定者にとって、なぜ重要なのかをお伝えします。
1. 各国と同盟国は、自前のAIスタックを構築し始めている
重要なAIインフラを自らコントロールできなければ、依存は一時的なものではなく、構造的なものになります。データセンター、国内での半導体パートナーシップ、そして国家安全保障のニーズに合わせて設計されたモデルやシステムは、米国とその同盟国にとって、いずれも重要な注力領域になっています。
これは半導体エコシステムにも直接影響します。AIアクセラレータ向けの先端パッケージング、熱管理、電力供給は、もはや「あれば望ましい」ものではありません。とりわけエッジ環境や、対立や妨害が想定される環境では、戦略上の重要領域になっています。
2. 国家安全保障向けAIラボが成果を出し始める
商用AIラボは、消費者市場やエンタープライズ市場を中心に最適化を進めています。収益の中心がそこにある以上、それは自然な流れです。その一方で、防衛オペレーション向けに設計されたシステムには、依然として空白が残ってきました。
2026年には、国家安全保障に特化したAIラボのうち、初めて本格的に成果を示すプレーヤーが現れてくるでしょう。そこで求められるのは、消費者向けモデルを単に作り替えたものではありません。数百のプラットフォームから得られるセンサーデータをほぼリアルタイムで取り込み、通信が不安定な状況でも不確実性のなかで推論し、ネットワーク障害時も含めて、複数ドメインにまたがる行動方針を迅速に提示できるように、用途特化で設計されたシステムになるはずです。
3. 海洋分野の自律化は、試作から量産へ移る
インド太平洋地域の約70%は海です。そして、この地域における物流と安全保障の課題はきわめて大きいものです。海底ケーブルは世界のデータ通信量のおよそ95%を担い、海上輸送路は年間で数兆ドル規模の貿易を支えています。
2026年は、海洋分野の自律化が、印象的な実証段階から継続的な量産契約へと移る年になると見ています。すでに海洋領域ではスタートアップのエコシステムが広がり始めています。補給、ISR(情報・監視・偵察)、機雷対策に対応する自律型水上艇に加え、海底インフラの把握や防護を担う水中ビークルも登場しています。
この領域の企業のなかには、すでに米海軍や同盟国軍とともにシステムの配備を進めているところもあります。さらに、同盟国の海軍が似たような制約に直面しているからこそ、米国・日本・オーストラリアなどの枠組みをまたいだ調達連携が実現すれば、採算性は大きく改善し得ます。
4. 宇宙は、競争と緊張が高まるダイナミックな環境になりつつある
宇宙はこれまで、商用収益と政府収益の両方が立つ、デュアルユースの最も分かりやすい例のひとつでした。今後予定されているSpaceXのIPOは、その市場の大きさやポテンシャルを象徴しています。
一方で、宇宙はますます競争的な環境になっています。現在の衛星は追跡され、妨害され、場合によっては標的になり得ます。これからの宇宙は、よりダイナミックなものになります。衛星はもはや静的で、一度打ち上げたら終わりの存在ではありません。今後は異なる軌道のあいだを移動できる機動性を持ち、ミッションに応じてペイロードやセンサーを交換できる、アップグレード可能なシステムへと進化していくでしょう。
5. 日本は、同盟国スタートアップとの連携モデルを築きつつある
日本の防衛予算は今期、600億ドルを超え、前年比で約5%増となりました。さらに、2027年までにGDP比2%に達する見通しも維持されています。より重要なのは、この資本を日本国内でどう生かすか、そして米国のような同盟国とどう連携して展開していくかです。
小泉防衛大臣は2026年1月、「ますます厳しさを増す安全保障環境」に対応するため、同盟は「緊急性とスピード」を持って行動しなければならないと明言しました。経済産業省と防衛省も、DIU(Defense Innovation Unit)のプレイブックの要素 ― 新たな契約の仕組み、より短い導入期間、新規参入障壁の引き下げ ― を取り入れ始めています。残る論点は、実行です。
もしこれが機能すれば、国防総省と日本の自衛隊の双方に、足並みのそろった枠組みを通じて製品やサービスを届けることが可能になり、ベンチャー支援を受けた企業の採算性は大きく変わり得ます。同盟国の産業基盤と技術的優位が組み合わさることで、この枠組みの中で動けるスタートアップや企業にとっては、構造的な競争優位が生まれるはずです。
注目すべき理由
これからの10年のディープテックは、アライアンスの上に築かれていきます。国家間のアライアンス、調達制度同士のアライアンス、そして緊急性を持って動く投資家と企業のアライアンスです。
この5つのテーマに共通するメッセージは、ひとつ。
単独で勝てる企業(あるいは国家)は存在しない、ということです。
GeodesicのAlliance Fundは、こうした潮流が交わる場所で、持続的かつ長期的な優位性を築けるSeed、Series A、Series Bの企業に投資しています。これらの領域で取り組む創業者の方、あるいはそれらをどう加速させるかを考えている意思決定者の方がいれば、ぜひお話しできればと思います。