Geodesic Capital 10年の歩み

Written by
Jon Rezneck

10年前、Wilson Sonsiniのオフィスにいた私たちGeodesicは、一つのシンプルで強い信念を持っていました。

「真のグローバルリーダーとなるエンタープライズソフトウェア企業には、日本市場での成功が不可欠である」

当時も現在も、日本は世界有数の経済規模を持ち、技術的に高度かつ大きなエンタープライズソフトウェア市場であり、法制度が整備され、知的財産権も確実に保護されています。その一方で、非常に複雑な市場でもあります。長期的な関係構築を重視し、徹底したローカライゼーションを求め、独自のGo-to-Market構造が存在しています。私たちは、優れた技術を持ちながらも、日本を他の海外市場と同じように扱ったがために失敗してしまったスタートアップを数多く見てきました。それほど日本市場は独特なのです。

私たちの信念は今も変わりません。日本での成功はスタートアップ全体の成長に大きく寄与し、投資においてアルファを生み出す重要な要素になるのです。Apple、Salesforce、Twitter/Xをはじめ、日本から大きな収益や市場ポジションを得ている企業は数多く存在します(米国に次ぐ第2の市場であることも多く、グローバル売上の大きな割合を占めています)。また、楽天やヤフージャパンといった日本企業も数百億ドル(数兆円)規模の時価総額を持ち、市場の大きさを物語っています。

そこで私たちは、単に資金を投じるだけでなく、それ以上の価値を提供する成長ステージのVCファンドを立ち上げました。ポートフォリオ企業が日本市場で勝ち、致命的な失敗を避け、大きく成功する企業へと成長できるよう、具体的かつ測定可能な形で支援することを目指しました。そのような価値提案によって、最高のスタートアップにアクセスできると信じていたのです。

その支援内容は多岐にわたります。市場アドバイスの提供、日本法人を率いる適切なカントリーマネージャーの発掘、独自に開拓すれば数年を要する顧客やGTMパートナーの紹介、さらには取引を頓挫させかねない複雑な規制環境への対応支援などです。

さらに、この投資・支援のサイクルを完成させるため、資金の多くを日本の大手機関投資家や事業会社から調達しました。彼らは優れたリターンを得ると同時に、自社のエンタープライズ変革に資する最先端スタートアップやシリコンバレーのイノベーションにアクセスできるのです。三菱商事をアンカーパートナーに迎え、2015年にFund Iを設立し、私たちが「Air Game / Ground Game(空中戦 / 地上戦)」と名付けた独自の支援手法を展開し始めました。

それから10年。結果は私たち自身の予想をも超えるものとなりました。

Geodesic Capitalは現在、5つのファンドを通じて約10億ドル(約1,500億円)のAUM(運用資産総額)を有しています。成長ステージの旗艦ファンドに加え、宇宙・セキュリティ分野に特化したアーリーステージヴィークル「Alliance Fund」も立ち上げ、米日間のパートナーシップをさらに強化しています。私たちのモデルは、創業者で元駐日米国大使ジョン・ルースが培ってきた日本での幅広い人脈と、東京を拠点とするオペレーターチームが培ってきたスタートアップ支援の豊富な実務経験を組み合わせたものです。

これまで65件以上の投資を実行し、そのうち約半数がすでに日本市場で事業を展開しています(今後さらに増える予定)。ポートフォリオとして、Databricks、Netskope、Figma、UiPath、Marqeta、Uber、Airbnb、Confluent、Vercel、Tanium、Looker、Clickhouse、JFrog、Glean、Island、Otter、Kinなどが名を連ねています。多くの企業が日本で大きな成果を挙げており、米国に次ぐ第2の市場、あるいは最も成長の速い市場となっているケースも少なくありません。たとえばUiPathは最新の開示で、日本市場がグローバル売上の約10%を占めると報告しています。弊社のLimited Partnerは、日本の各産業セグメントを代表するメガバンク、保険会社、製造業、総合商社、機関投資家などになります。

毎年開催している「Geodesic Forum」は、今や特別なイベントとなっています。15〜17社のスタートアップ(ポートフォリオ企業とそうでない企業も含め)を東京に招き、3日間にわたる個別ミーティングやイベントを通じて、参加した各社に市場調査の機会を提供しています。私たちがよく言うのは「1年分のビジネス開発を3日間に凝縮する」ということ。創業者たちが日本市場の可能性に「なるほど」と気づく瞬間を見るのは、いつも新鮮です。

この10年で、私たちは具体的で再現性のある支援型投資アプローチを築き上げ、ベンチャーキャピタル業界において他との差別化を実現してきました。決して容易な道のりではありませんでしたが、ポートフォリオ企業へのインパクト(そしてリターン)が、このアプローチの正しさを証明しています。

では次の10年に向けて、私たちはどこへ進むのでしょうか。

私たちの目標は、マルチステージ・マルチプロダクトの投資会社へと進化しながらも、DNAの中核である「シリコンバレーと日本をつなぐ橋(SV-Japan Bridge)」に集中し続けることです。新たなセクターやステージ、多様な投資プロダクトの可能性を見出しています。また、日本発のスタートアップがグローバルに展開する支援にも力を入れていき(すでに1社がポートフォリオに入っています)、真の双方向のブリッジを目指していきます。

最後に、Geodesicの現メンバーとそのご家族、OB/OG、信頼するアドバイザー、LP、ポートフォリオ企業、そしてこれまで支えてくださったすべての方々に心から感謝申し上げます。10年前、まだ実績のなかった私たちのチームとビジョンを信じてくださり、今日まで変わらず応援してくださっていることに、改めて深く感謝いたします。

誠にありがとうございます。

頑張りましょう!

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