Glean AI:企業が持つナレッジを再定義し、働き方の未来を形にする
Written byARVIND AYYALA
自律性と文脈理解を備えた“エージェンティックAI”が、企業の業務のあり方を大きく変え始めています。。パーソナライズ、セキュリティ、自律性、推論、文脈理解など、エージェンティックAIの成功を左右する要素はいくつもありますが、企業におけるその成功を支える基盤は、企業内の情報を安全に、かつ部門を超えて統合できる最新のナレッジベースが、成否を分ける鍵です。GleanのエージェンティックAIプラットフォームは、まさにその基盤となるだけでなく、複雑で多段階にわたるビジネスワークフローを自動化するAIエージェントの構築・展開・連携を、ユーザー自身が行えるよう進化を遂げています。こうした背景から、GeodesicはGleanへの投資を決めました。企業のナレッジマネジメントという難題を解決することで、GleanはエージェンティックAI時代へと企業を導く信頼あるパートナーとなっているのです。
エンタープライズサーチ:ようやく変革の機が熟した、数十年来の課題
何十年にもわたり、効率的な企業向けナレッジマネジメントの実現は困難を極めてきました。従来のソリューションは、バラバラなシステムに分散した情報、使いにくいユーザーインターフェース、そして根本的な文脈の欠如によってその可能性を阻まれ、従業員は必要な情報という“針”を、膨大な“デジタルの干し草の山”の中から探し出さねばなりませんでした。
Gleanが取り組む核心的な課題は、企業に深く根付いたものです。従来のエンタープライズサーチツールはAI以前の時代に設計されたものであり、何百ものアプリケーションやクラウドプラットフォームにまたがる大規模なデータサイロをつなぐことができず、文脈を理解したり、アクセス権限を区別したり、一見無関係に見える情報同士を結びつけたりするだけの知能も備えていませんでした。さらに、チャットログやメール、共同編集されたドキュメントなど、非構造化データの爆発的な増加が、こうした課題を一層深刻化させました。
この非効率性は生産性に大きな悪影響を与えており、従業員は社内ドキュメントを探すだけで週に最大9時間も費やしているというデータもあります。リモートワークやハイブリッド勤務への移行によって、こうした問題はさらに深まり、組織内の知識のシームレスな流れの重要性はかつてないほど高まっています。
Glean AIの強みは、現代の企業が抱える情報の複雑さに対応するためにゼロから構築された、AIネイティブなアーキテクチャにあります。この基盤の中核には、社内の文書や会話、構造化・非構造化データのつながりを可視化するナレッジグラフと、常に最新の情報を参照して精度の高い出力を可能にする RAG(検索拡張生成: Retrieval-Augmented Generation)という技術が採用されています。Gleanはこの革新的な構成により、単なるキーワードの一致ではなく、情報の意味や文脈を理解し、利用者の役割やアクセス権限に応じて最適な情報を提示します。たとえば、社内の情報同士の関係性を可視化するナレッジグラフの活用により、営業担当者には最新の提案資料を、エンジニアには関連する設計仕様を、役割に応じて自動的に提示することができます。
また、この仕組みは利用されるたびに情報の関連性が学習されていくため、使うほどに検索精度と業務への適合性が向上するという構造的な利点があります。加えて、AI処理にかかるコスト(例:検索時のトークン消費)にも配慮された設計となっており、パフォーマンスと運用コストのバランスにも優れています。
こうしたアーキテクチャにより、Gleanは従業員が「情報を探す手間」を最小限に抑え、的確かつ安全に業務上の意思決定に必要な情報を提供する“知識インフラとして機能しています。
GleanのWork AIプラットフォーム:エンタープライズAIを支える重要なインフラレイヤー
Glean AIは、検索を軸としたアシスタント機能にとどまらず、企業がいままさに必要としている「オープンかつ横断的なAIデータプラットフォーム」としての位置づけを確立しつつあります。AI活用が経営レベルでの重要課題となる中、多くの企業がAI戦略の構築と管理を支える共通レイヤーを求めています。Gleanのプラットフォームは、堅牢なセキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス機能を備え、まさにその中核を担う存在です。
Gleanは企業データの“スイス”(中立的)な立場として、Microsoft、Google、Databricks、Snowflake、Workdayなど、さまざまな業務基盤やSaaSアプリケーションとシームレスに統合される設計となっており、100以上のコネクタによる幅広い接続性を実現しています。これにより、Gleanは他のソフトウェア企業が開発するエージェントの土台としても機能し、複数ベンダーへのアクセス権付与に慎重なCIOの懸念にも応える、信頼のおけるパートナーとなっています。
また、こうした連携は、Gleanが他社プラットフォームに対しても中核的なAI機能を提供できることを証明しており、相互運用性と自律的なエージェント運用を支える協調的なエージェントエコシステムの構築を促進しています。このような戦略的ポジショニングにより、Gleanは2030年までに500億ドル(約 7.3兆円)規模に達すると予測されるAIエージェント市場において、確かな存在感を発揮できる立場にあります。
リーダーシップの卓越性:不確実な時代にこそ不可欠
急速に進化するエージェンティック時代には、確かな舵取りを担うリーダーシップが欠かせません。Gleanを率いるArvind Jain氏は、Rubrikで共同創業者としてデータとセキュリティの中核を担い、Googleでは検索プロダクトの開発に携わるDistinguished Engineerを務めた経歴を持つ、エンタープライズナレッジの管理と、エージェンティックAIにおける情報活用という難題に取り組む上で、他にない適任者です。
彼を支える経営チームも、その専門性をさらに強固なものにしています。CTOのT.R. Vishwanath氏は、MetaとMicrosoftで16年の経験を積み、Facebookのニュースフィードのランキングエンジン開発をリードした実績を持ち、大規模データの管理とユーザーエンゲージメントに関する深い知見を有しています。プロダクト&テクノロジー部門のプレジデントであるTamar Yehoshua氏は、SlackのCPOやGoogle検索部門のVPを歴任し、プロダクト開発とユーザー体験に関する豊富な経験をGleanにもたらしています。またCRO(最高収益責任者)のMarc Wendling氏は、SnowflakeやSumoLogicで培った営業リーダーシップを活かし、製品のスピード感を顧客への価値創出へと確実に結びつけています。
プロダクト、データ、セキュリティ、そして市場戦略という各領域にまたがるこうした専門性の結集により、Gleanはその壮大なビジョンを実現し、激しい競争環境の中でも確実に前進する力を備えています。
そして、今がまさに好機です。Geodesic CapitalがGleanに投資を決めたのは、同社がエンタープライズの生産性を根本から変革するリーダー企業であるという確信に基づくものです。将来的に、AIを活用する企業にとって不可欠な「知識を浮かび上がらせるインフラ」となる可能性を秘めた存在への投資でもあるのです。