SEOからGEOへ―AI時代、企業はどう「見つけられ」、どう選ばれるのか
Written byJUSTIN YUE
追加導入文
これまで企業のデジタル上の可視性は、主にSEOの文脈で語られてきました。しかし今、その前提が少しずつ変わり始めています。検索結果で見つけられることに加え、生成AIの回答の中でどう扱われるかが、新たな論点になりつつあるからです。本稿は、こうした変化を米国のソフトウェア市場の視点から論じたものですが、AIが情報探索や比較検討の起点になりつつある構造変化は、日本の企業にとっても無関係ではありません。DXやAI活用を推進する現場においても、今後は「検索結果に表示されること」だけでなく、「AIの回答の中でどのように認識され、引用されるか」が、企業の可視性や選ばれ方に影響を及ぼしていく可能性があります。そして、より早く適応した企業は、発見され、評価され、最終的に選ばれる過程において、優位性を持つ可能性があります。
長年にわたり、検索エンジン最適化(SEO)は、ソフトウェア企業がデジタル上での可視性を考えるうえで中核となる取り組みでした。SEOの目的は明快です。従来型の検索結果で上位に表示され、組織のウェブサイトへの流入を増やし、その関心を商談機会へとつなげることです。
しかし、生成エンジン最適化(GEO)は、このマーケティングの動きを変えます。
GEOは、Claude、ChatGPT、Geminiといった基盤モデルのチャット回答の中で、自社が言及・引用されるようにコンテンツを最適化することに焦点を当てます。単にリンク一覧の中に表示されることを目指すのではありません。これはマーケティングにおける小さな変化のように聞こえるかもしれませんが、私には、ソフトウェアがどのように発見され、評価され、最終的に購入されるのか、そのあり方自体が変わりつつあることを示しているように思えます。
この流れは、ソフトウェアスタートアップのマーケティングチームにとって、特に注視すべきものです。なぜなら、リンクベースの発見から、答えベースの発見へと移行しつつあることを示しているからです。最終的に、AIツールが、買い手によるベンダー候補の絞り込み、比較検討、推奨先の抽出において、より一般的な役割を担うようになれば、それらのシステム内での可視性は、GTM(Go-to-Market)の成果にとってますます重要になっていく可能性があります。
GEOはなぜSEOと異なるのか
SEOとGEOには重なる部分もありますが、情報を表出させるプラットフォームと、その最終目的は異なります。
従来のSEOは、検索順位を高めることを中心に据えています。GoogleやBingのような検索エンジンは、ユーザーを外部のウェブサイトへ誘導し、そこでさらに調査・検討が続きます。一方、GEOは異なる仕組みで機能します。生成エンジンは、複数の情報源を要約し、単一の回答として提示します。GEOは、クリックを促すロジックよりも、引用ベースの可視性に重きが置かれるのです。
この変化を気にかけるべき理由
私がこれが創業者にとって重要だと考える理由はシンプルです。ソフトウェア調達のあり方が変わりつつあるからです。買い手がソフトウェアの発見や評価を支援するためにAIツールを使うことが増えるなら、企業は人間だけでなく、そうした発見のワークフローを形づくるAIエージェントにも向けてマーケティングを行う必要が出てきます。
これは特にエンタープライズソフトウェアにおいて重要です。この領域では、評価プロセスが多くの場合、時間を要し、反復的に進みます。買い手は詳細な質問を投げかけ、ベンダーを比較し、候補を絞り込み、自社に合った答えを求めます。AIツールは、このような探索方法と相性が良いと言えます。情報を統合し、追加質問に応じて出力を洗練させ、より個別最適化された形で選択肢を提示できるからです。
この変化はまだ初期段階だが、仮説の話ではない
GEOへの注目が高まっている理由の一つは、その根底にある行動変化がすでに始まっているように見えるからです。私がデジタルネイティブなソフトウェアスタートアップと話す中でも、ソフトウェア調達においてAIエージェントが活用され始めていることを示す事例が聞こえてきています。もしAIツールが、ベンダーの特定、選択肢の比較、そして企業の購買意思決定の支援において、より能動的な役割を果たし始めるのであれば、企業は、そうしたシステムの中で自社がどのように現れるのかについて、戦略を持つ必要があります。
また、GEOの運用支援を目的として創業されたスタートアップもすでに存在します。Profound、Brandlight、Evertune、Scrunchのような企業がこのカテゴリーで事業を構築しています。今後は、GEO専業ベンダーに加え、エージェンシーやコミュニケーション支援会社を含む周辺サービス提供者の参入もさらに進むと見ています。この機会領域は、すでにそれを支えるインフラが構築され始めているほど、現実味のあるものです。
AIがソフトウェア発見プロセスに組み込まれると、何が変わるのか
もしAIツールが、買い手によるソフトウェアの発見や評価の一部になるなら、創業者は「可視性」とは何かを改めて捉え直す必要があります。つまり、企業は、AIシステムが依拠しているように見える情報源、自社が属するカテゴリーのポジショニングの明確さ、自社プロダクトがウェブ上でどのように記述されているか、そして信頼できる第三者のコンテンツがどの程度その関連性を裏づけているかに、これまで以上に注意を払う必要が出てくるかもしれません。
同時に、これまで企業がブランド、コンテンツ、PR、あるいはソートリーダーシップの文脈で捉えてきた取り組みの一部が、AI環境においては、より直接的に「発見されやすさ」に影響を与えるようになる可能性もあります。
依然として最大の論点はアトリビューションである
ブランドは、生成AIによる発見体験の重要性を感じていたとしても、GEOの取り組みが売上にどのように結びついているかを測定することには苦労しています。それが見えなければ、継続的な投資を正当化するのは難しくなります。真に価値あるGEOツール企業は、単に可視性を測定するだけでなく、企業に対してその改善方法を示し、さらにそのインパクトを定量化できる存在になるはずです。
今やるべきこと
エンタープライズ向けソリューションの販売を目指す創業者は、今のうちからこの動きに注意を向けるべきだと私は考えています。自社市場における買い手の行動を把握するための問いとしては、たとえば次のようなものがあります。見込み顧客は、調査や調達を支援するためにAIツールを試し始めているでしょうか。発見のワークフローは、従来型の検索ではなく、Claude、ChatGPT、Perplexity、Geminiから始まるケースが増えているでしょうか。
また、創業者は、自社顧客基盤におけるAIエージェント導入の進度にも目を配るべきです。よりモダンなテックスタックを持つ組織や、技術理解の深い経営・リーダーシップを備えた、先進的な企業ほど、調達プロセスにAIを活用することに前向きである可能性があります。時間の経過とともに、そうした初期導入のパターンは、ソフトウェア評価のあり方そのものを広く変えていくかもしれません。
より広い視点での示唆
創業者にとって重要なのは、GEOがこれまでのすべてを置き換える、ということではありません。重要なのは、AIがすでに「発見」の仕組みを変え始めており、そのことが、誰が見つけてもらえるのか、誰が候補に残るのか、そして誰が選ばれるのかに、実際の影響を及ぼし得るという点です。
市場はまだ初期段階にあります。ツールもまた進化の途上にあります。しかし、その根底にある変化は、真剣に受け止めるに値します。より早く適応した企業は、発見され、評価され、最終的に選ばれる過程において、優位性を持つ可能性があります。