Altruist: 資産運用業界の変革者

Written by
ARVIND AYYALA

急速に変化する資産運用業界において、従来型のカストディアン(資産管理)モデルは、独立系登録投資顧問(RIA)にとってますます複雑かつ高コストなものとなっています。こうした中で、テクノロジーを活用した効率的なプラットフォームを通じて包括的な金融サービスを提供する能力は、成長と顧客満足のために欠かせない要素となっています。

Altruistは、RIA(日本の金融商品仲介業者IFAに相当)が直面する根本的な業務効率の課題に対し、垂直統合されたソフトウェアスタック、RIAの成長ニーズに応じた高性能なプラグイン群、そして何よりも21世紀型に設計された堅牢なカストディインフラを通じて、解決策を提供しています。

Geodesic Capitalは、Altruistが次世代の資産運用のためのカストディアン・プラットフォームを目指すビジョンに共感し、その取り組みに参画できることを光栄に思います。

資産運用業界の変革

資産運用業界は現在、大きな構造変化の真っただ中にあり、Altruistのような革新的な企業が活躍するための土壌が整いつつあります。米国における独立系およびハイブリッド型のRIA市場は、過去10年間にわたり堅調な成長を遂げており、年平均で高い一桁台の成長率(CAGR)を記録しながら、現在では約9兆ドル(約1,400兆円)規模にまで拡大しています。そして、2027年には11兆ドル(約1,700兆円)に達するという予測も出ています。

この成長の背景には、いくつかの重要な要因があります。

  1. 「団塊世代」から次の世代への資産移転が進んでおり、これに長期的な経済成長が重なることで、投資可能な資産全体の規模が拡大しています。
  2. 大手の伝統的な資産運用会社(いわゆるワイヤーハウス)から独立し、自らRIAを設立するアドバイザーが増加する「breaking away(独立する動き)」が顕著になってきています。これは、より高い自由度と経済的な合理性を求める流れによるものです。
  3. RIAは他の金融アドバイザリーファームと比較して、市場シェアを拡大しています。これは、きめ細かなサービスモデル、包括的なソリューション、そして顧客とのフィデューシャリー(受託者責任)に基づく関係性が評価されているためです。

こうした成長が進む一方で、RIA市場は依然として革新の余地を大きく残しています。この業界は非常に細分化されており、時代遅れのテクノロジーや分断されたソリューションによって支えられているのが実情です。

主要な旧来型のカストディアンであるCharles SchwabやFidelityは、古いインフラを前提に運営されており、それが非効率性や高コスト、さらには最適とは言えない顧客体験を引き起こしています。

RIAは通常、ポートフォリオ管理、取引、レポート作成、クライアントのオンボーディングなどの基本的な業務機能において、複数のサードパーティ製ソフトウェアを組み合わせて利用する必要があります。その結果、業務フローは複雑化し、コストもかさむという課題に直面しています。Altruistの垂直統合型アプローチは、こうした課題を的確に解決します。

カストディ業務と、フロント・ミドル・バックオフィスの各種ツールを一体化することで、旧来のプロバイダーや外部サービスを個別に組み合わせる場合と比べて大幅に低コストでの導入が可能です。この提供価値は、先進的なRIAにとって非常に魅力的で、強く支持される理由となっています。

豊富な資産運用管理経験を持つリーダーシップチーム

根深く複雑な業界に挑むには、卓越した経験と専門性を備えたリーダーシップが不可欠です。創業者兼CEOのJason Wenk氏は、創業者とプロダクト、そして市場が完璧にフィットしている「n of 1」の存在(唯一無二の適任者であることを指す表現)であり、資本市場に対する深い知見と製品に対する洞察を兼ね備えています。

彼は20年以上にわたる資産運用管理の経験を持ち、これまでに2社の資産運用会社を設立・成長させてきました。ひとつは総運用資産(AUM)を1億ドル(約155億円)まで成長させたRetirement Wealth社、もうひとつは6年で36億ドル(約5,580億円)のオーガニックAUMを達成したFormulaFolios社です。

彼を支えるのは、豊富な経験を持つ経営陣です。CROにはRich Rao氏 (Google/Intuit)、CTOにはSumanth Sukumar氏 (Coinbase/Uber/Meta)、CFOにはMarc Greenberg (Blend)、CPOにはHarpreet Ahluwalia氏 (ServiceTitan/Salesforce) 、そしてCOOにはMazi Bahadori氏 (Aspiration/PIMCO) が就任しています。

中でも Rich氏は、Google Workspace のプロダクトをプロダクト主導型・セールス主導型の両軸でゼロから10億ドル(約1,550億円)規模まで成長させたという、稀有な実績を持っています。Harpreet氏は、ServiceTitan のプラットフォームを幅広い業種(トレード業)に対応するまでに育てたプロダクト経験を有し、Sumanth氏は「スケーラビリティのためのエンジニアリング」において豊富な実績を積んでいます。これらの人材がチームとして揃っていること自体が、Altruist の次なる成長フェーズに向けた強力な体制を示しています。

垂直統合がもたらす競争優位性

Altruistが実現した最も重要なイノベーションは、資産運用テクノロジースタック全体の垂直統合です。カストディ業務、資産運用プラットフォーム、業務管理ソフトウェア、顧客獲得ツールといった各機能をシームレスに統合することで、AltruistはRIAに対して大幅なコスト削減と業務効率化を提供しています。

この統合型アプローチにより、複数の競争優位性が生まれています:

  1. デジタルファーストの体験:従来の紙ベースに依存した旧来型プラットフォームとは異なり、Altruistは5分以内で完了する完全なデジタルアカウントの開設、リバランスの自動化、モダンなクライアントポータルなどを提供します。このシームレスな体験により、人的コストを40〜60%削減し、顧客満足度を大幅に向上させています。
  2. 統合されたテクノロジースタック:Redtail、MoneyGuide、Morningstarといった主要ツールとネイティブに統合されており、旧来のシステムでRIAが抱えるデータ突合の課題を解消します。これにより事務負担が軽減され、アドバイザーはより多くの時間を顧客対応に充てることができます。
  3. プロダクトの反復開発:デジタルネイティブなプラットフォームであることにより、機能の使用状況やその重要性に関するフィードバックをリアルタイムで取得することが可能です。これにより、機能の迅速な改良と開発のスピードが実現されています。
  4. コスト効率:一定の規模以上の顧客に対しては、ソフトウェアの無償提供という、従来とは大きく異なるモデルを採用しています。サードパーティのソリューションが不要となり、ソフトウェアコストは90〜95%、ポートフォリオ運用コストは50〜80%削減されます。
  5. 利害の一致:Schwab や Fidelity が、自社のカストディ顧客を含む RIA と競合する形でリテール向けサービスを拡大しているのに対し、Altruist は RIA 専用のプラットフォームとして運営されており、RIA のビジネス目標と 完全に利害が一致する体制を確保しています。

AI時代において、私たちは現在、競争優位性は「データ」と「機動力」の両方に集約されつつあると考えています。Altruistの高いプロダクト機動力は、AI機能の実装を支える強力なデータ基盤によってさらに強化されています。

このような成長の機会は、かつてTD Ameritradeが辿った軌跡を彷彿とさせます。同社はまず小規模なRIAを中心に事業を展開し、その後に上位市場へと拡大していきました。Altruistもすでにこのパターンを示しており、さまざまな規模のRIAにサービスを提供しています。

Altruistは、長年にわたり既存のサービスに甘んじてきた業界を、再構築しようとする存在です。垂直統合というアプローチに加え、自らがカストディアンとして機能することにより、経験豊富なRIAが求める製品を自社で開発できるだけでなく、成長段階のRIAが将来的に利用していく製品も提供することが可能です。

デジタルファーストで統合されたプロダクトスタックに加え、幅広いRIAに対応できる深い専門性を持ったリーダーシップチームが揃っていることから、Altruistは業界の未来を牽引する存在として、その地位を確実なものにしつつあります。

Geodesic Capitalは、Jason氏とAltruistのチームと共に、資産運用の分野をAI時代へと導いていけることを大変光栄に思います。

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