DXの要となる「データ」と「自動化」分野のトレンド
企業におけるデータ活用とワークフローの自動化が注目されています。市場規模や投資金額も顕著な伸びを示しており、ソリューションの幅も広がってきました。デジタルトランスフォーメーション(DX)の要ともいわれるこの分野の動向を探ります。
データの重要性
現代の業界リーダーが成功を収めるには、従来のようにデータを記録して振り返るだけでなく、そのデータを未来に向けて積極的に活用しなくてはなりません。いわば、データを基に行動に移す、データドリブン(駆動型)であることが重要なのです。
データ市場の規模は、2020年が1390億ドルで、2025年には2290億ドルまで成長すると見込まれています。フォーチュン誌の選ぶトップ1000社を対象とした調査によると、90%の企業がデータやAIへの投資が加速していると回答したほか、データによってビジネスが成長したと回答した企業が29.2%にのぼりました。成長を感じている企業のうち約3割、つまり全体の約10%は、データ戦略を明確に定めており、そこに成功の秘訣があることがわかります。
一方、自動化市場はまだ比較的新しく、その規模も2020年が140億ドルと、データ市場に比べると小規模です。取り組みを進めている企業も限定的で、自動化推進チームを導入している組織は30%。ただし、自動化は急速に企業のワークフローに組み込まれつつあり、コスト削減のため今後も採用が進むことが期待されています。
RPA(Robotic Process Automation)のカテゴリーに限っては、日本の大企業での導入が進んでいます。例えば、RPAプラットフォームを提供するUiPathは、日本市場での売上が全体の約4分の1を占めています。グローバル企業の日本市場の売上比率は平均約10%であることからも、UiPathの日本市場での貢献度の高さは顕著で、RPAが日本の大企業に受け入れられていることがわかります。
データや自動化を手掛ける企業への投資が拡大
こうした背景もあり、データや自動化分野のスタートアップ企業への投資規模は劇的に拡大しています。データ市場への資金提供金額は、2020年の350億ドルから2021年には791億ドルにもなりました。
一方、自動化市場への資金提供金額は、2021年でも50億ドルと、データ市場の約15分の1程度に過ぎません。ただ、成長のスピードは著しく、2020年から2021年にかけては投資規模が約3倍にもなっており、この分野への期待が大きく見て取れます。
Geodesicでは、2016年にファンドを設立した当初から、データ分野への投資に注力してきました。こうした分野のリーダー企業(ThoughtSpot, Databricks, Looker)に初期に投資し、日本進出のサポートも手掛けたことから、次の世代のリーダー企業(DataRobot, Pendo, Imply, Confluentなど)への投資につながりました。このデータ分野での投資の評価は、2019年以降の自動化分野のリーダー企業(Appzen, UiPath, Workatoなど)への投資にもつながっています。
増え続けるデータの活用に向けて
データ市場では、データ量が急速に増加しています。世界中で作成、取得、コピー、消費されるデータと情報量は、2025年には181ゼタバイトとなることが予測されています。今後もますますデータの取得量は増え、データ活用が進みます。そこに新たなニーズが誕生し、そのニーズに合わせたソリューションも生まれてくるでしょう。
その中で、Geodesicが特に注目しているのはリアルタイムのデータ活用です。データをリアルタイムに活用することで、市場との接点が近くなり、経営判断が迅速化し、ユーザーの期待に応えられるようになるためです。
成功の鍵となるオープンソースエコシステム
データと自動化の分野で成功しているのは、オープンソースエコシステムができあがっている企業です。オープンソースエコシステムにより、開発者とのつながりや、コミュニティとの対話、ユーザーフィードバックが生まれます。すでに開発者人員も揃っているオープンソースのトッププロジェクトは、競争力のある企業設立の源となり、低コストで顧客獲得を実現する需要創出エンジンにもなっているのです。
例えば、Kafka、Spark、Druid、Hiveなどのオープンソーステクノロジにはそれぞれコミュニティが存在し、そのコミュニティをベースとしてConfluent、Databricks、Imply、Dremioといった企業が誕生しています。このように、オープンソースエコシステムを活用した技術や企業の成長が顕著になってきており、Geodesicでもこうした技術を事業の軸に据える企業に積極的に投資しています。
水平型ソリューションから垂直型ソリューションへ
自動化分野ではニーズに合わせて、RPA、IPA、iPaaS、ノーコード・ローコードといったさまざまなソリューションカテゴリーが誕生しました。現在多くの企業では、効率化を実現しようと、部門をまたいで展開可能な水平型ソリューションの採用が進んでいます。ただし、今後は部門や業務に特化した垂直型ソリューションも注目されるようになるでしょう。例えば、AIで経費精算の不正請求を自動チェックするシステムを開発しているAppzen、AIを使ったカスタマーサポートを提供するForethought、AIを活用した採用ソリューションを提供するParadoxなどがあります。
日本市場には、市場独特のニーズや商習慣、法規制が存在します。そのためグローバル展開する企業でも、日本進出の際には市場をよく知るパートナーとのエンゲージメントが必要となるでしょう。つまり、日本のシステムインテグレーターとの連携が成功の鍵になるのです。
自動化によってさらなる成長へ
自動化で得られるメリットはさまざまです。作業時間が短縮できることはもちろん、エラーや運用コストも削減できますし、作業品質の平準化も可能です。その中でも特に大きなメリットが、自動化によって生まれた時間の余裕を、より重要度の高い業務に集中させ、成長への道を切り開くことができる点です。
データ分野・自動化分野ともに、業界内の再編が活発です。コロナ禍でも企業買収は進んでおり、各分野のリーダー企業が、ユーザー体験を向上させようとさまざまな機能を統合しようとしています。この2つの分野は、今後もDX推進の要として、進化を続けることでしょう。