VCはどうやってDXを実装したか:シンプルだけど意味のあるもの

Written by
HYESU SAI

Geodesicはベンチャーキャピタルですが、3年かけてDXをしてきました。

そのひとつがTHE DOME ニュースレターです。2020年10月から毎月配信され、コンテンツ配信の幅は、Youtube、Note、Linkedinと広がり、今では、自社のウェブサイトにコンテンツページを持つまでになりました。ここまで続けてこれたのは、Geodesicメンバーの経験や知識、関連企業のご協力、何より、コンテンツを見ていただいているみなさまのおかげです。本当にありがとうございます。

このニュースレターですが、担当者の私はこれを「コミュニケーションDX化プロジェクト」と呼んでいます。DXと聞くと、何か大規模のプロジェクトだったり、大きなお金が動くことをイメージしがちですが、必ずしもそうとは限りません。DXは「Digital=デジタルを持って、Transformation=変化する」ことで、日々の業務や生活をよりよく、よりユニークにすることであると考えています。辿り着くまでのプロセスは複雑なこともありますが、ミッションや対象となる相手(カスタマー)がはっきりしていれば、DXのゴールや目的はシンプルで意味のあるものです。何より大切なのは、そこから生まれる価値にあります。小規模で始まり、サポート業務の一輪を担うまでになったGeodesicのDXプロジェクトを例にご説明したいと思います。

Geodesicの会社としてのミッションは「日本とシリコンバレーの架け橋となる」ことにあります。ユニークな投資活動やビジネスサポートや全てこのミッションに起因し、その集大成となるのが、毎年2月に東京で開催されるフラグシップイベントGeodesic Forumです。多くの米国スタートアップ企業を東京に招聘し、最新のテクノロジーに関心のある日本の方々をご招待して、シリコンバレーの最新情報をご紹介し、これらの企業との接点を持っていただく機会となっています。

しかし2020年、パンデミックが始まった時、ほぼ全てのリアルイベントが中止となり、Geodesic Forumもその例外ではありませんでした(Geodesic Forumは2023年からまた開催をしています)。それまでは通常の業務も含め、オフラインでの接点(対面でのミーティングなど)が多かったため、当時、弊社メンバーにとってオンラインでの接点を作ることは急務の課題となり、これが「コミュニケーションDX化プロジェクト」の始まりでした。

コミュニケーションツールとしてニュースレターを選んだ理由は、私たちのDXプロジェクトの目的・ゴールを達成するために、最も適したプラットフォームだと思ったからです。THE DOMEという名前もそういう場所を作りたいということに由来しています。

DXプロジェクトのゴール

  • シリコンバレーの生の声(一般的なニュースの後ろにある背景やリアル)を日本のオーディエンスに直送できる
  • 様々なフォーマット(動画、音声、テキスト等)でのコンテンツ作成ができるため、最新のテクノロジーについてわかりやすく伝えることができる
  • 常に日本のオーディエンスと繋がることができる

シリコンバレーやアメリカのテクノロジー情報について伝えているメディアはたくさんありますし、彼らの方がパブリックな情報の伝達スピードは圧倒的に早いです。その中で我々は、より深い理解や考えをもたらすことにフォーカスし「ソートリーダーシップ」をキーワードにさまざまな情報をお届けしてきました。

ソートリーダーシップを軸に置く理由

  • 物事の背景について知ることで、より深い理解や次のアクションに繋がる
  • 言葉が一人歩きしたり、バズワードが広がるような時の情報の取捨選択において、最前線で関わっている人やその分野で深い経験のある人の言葉は、その判断の一助となる
  • タイムリーであることが重要視されがちなテクノロジー関連の情報の中でも、時間を経ても有益となるメッセージを捉える

例えば、AI分野をリードしているDatabricks社のCEO Ali Ghodshi氏のインタビューでは、AI導入への心構えや必要要素、AI革命が進む中での本当の意味でのリスクについて話していますが、これらは今でもよく取り上げられる話題です。株式会社ニコンの執行役員でありシリコンバレーでの投資活動をリードするHamid Zarringhalam氏は「投資よりも難しいのは、買収後の企業連携だ」と言い、投資の意思決定プロセスと企業連携のべストプラクティスについてお話いただきました。これはあらゆる投資・買収に関わる方にぜひ聞いていただきたい内容です。

それでは、Geodesicの作り出すコンテンツの背景には何があるのでしょうか?それはまず、会社、日々の業務、ニュースレターの目指すものが共通していること、そしてGeodesicという組織とメンバーの協力のもとに成り立っています。

シリコンバレーでのコミュニティ:Geodesic Capitalの投資チームメンバーは、常にシリコンバレーの起業家、投資家、オピニオンリーダーと日常的に交流をしています。そこには、ネットやパブリックな情報からは得られない、インサイダーの情報や繋がりがあります。それについては、Geodesicの投資チームを率いるJon RezneckとパートナーのMatt Fullerが動画で詳しく話しています

投資先企業(ポートフォリオ)との連携:Geodesicは約50社のスタートアップ企業に投資をしており、そのうち約20社が日本に進出しています。Geodesicは投資先企業のビジネスサポートを通して、テクノロジーそのものだけでなく、日本と米国での各分野で活躍する人たちからの知見を得ています。その知見を共有できたコンテンツのひとつが、デザイン分野で革命を起こしているFigmaのカントリーマネージャーのインタビューです。

DX戦略におけるLimited Partnerとの協業:弊社のLimited Partnerには、戦略的にシリコンバレーの会社を紹介したり、その協業を促すことで、日本企業のDX推進のサポートをしています。その一環として、昨年、Limited Partnerを対象としたオンラインイベント「DX Series」を開催しました。その内容の一部を各テーマに沿って「データと自動化サイバーセキュリティUI/UXESG/SDGs」4つの記事に分けて掲載しています。

オンラインでの繋がり・共有の場を求めて始め、まだ3年、されど3年、毎月欠かさず配信をしてきました。続けていると、月1回の配信ではニュースやコンテンツを全て共有しきれなくて、月2回配信していることもあります。パンデミックが終焉し、リアルで人と会える日常が戻ってきた今でもニュースレターを続けているのは、ここがGeodesicにとっての大切なコミュニケーションの一部となっているからです。

今まで限られた機会で限られた繋がりにしか共有できていなかった知見をより多くの人によりわかりやすく届けることができるようになった:DX推進のためにはまず世界で何が起こっているかについて知ることが重要です。Geodesicでは、上に述べたような投資活動やDXサポート活動から、シリコンバレーと日本で起きていること、課題、チャレンジが見え、それらに対してのスタートアップ企業と日本の大企業を含むユニークな独自の視点を持っています。それは、日本と米国におけるDXのアプローチの違いに気づくことにも繋がりますが、どちらが正しいというのではなく、社会や文化が違うから、やり方も受け入れられ方も違うのです。そういった点も認識しつつ、双方のベストプラクティスを紹介しています。

リアルのコミュニケーションがよりスムーズになった:イベントやミーティングで初めてお会いする方、久しぶりにお会いする方など様々ですが、中には、弊社のコンテンツを見ていただいている方も多くいらっしゃるようで、特に、それぞれ動画シリーズを持っている尾辻や大塚などは「あのインタビュー見ました」と会話が始まったり、「あの動画で言っていたあの事例はどういうことなんですか?」とより具体的な話にすぐに入ることができたりすることがあるそうです。時には、初めてお会いする方に「いつも動画見てます」とフレンドリーにお声がけいただき、お知り合いを忘れてしまったかと焦ったよ〜といったエピソードもあります。

今年、プロジェクト発足時からの念願だった、コンテンツのまとめページを作ることができました。公式ウェブサイトのリニューアルをきっかけに(これも実は企画と準備に1年以上かかっています)インサイトページを作成!動画、記事、過去のニュースレターを含めた日本語のコンテンツだけでなく、Geodesic本社が出している英語のコンテンツも一度に閲覧できるようになっています。

THE DOME ニュースレターでは、今後もみなさまのシリコンバレーのスタートアップコミュニティとの協業をより活性化させ、日本でのデジタルトランスフォーメーションのサポートとなる情報を発信していきます。すでにいま話題のキーワードやテーマをカバーしたコンテンツの配信を予定しています。楽しみにしていてください!また、ご関心のあるトピックやGeodesicメンバーにカバーして欲しいテーマなどがありましたら、ぜひご意見をお寄せください。

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